ホームセンターなどで手軽に購入でき、取り付けも比較的簡単なことから、DIYでも人気の円筒錠。しかし、その手軽さゆえに、設置場所を誤ると非常に危険な事態を招く可能性があります。その理由は、円筒錠の防犯性が構造的に極めて低いという点にあります。なぜ円筒錠は防犯に向かないのか、その理由を正しく理解しておくことが重要です。円筒錠の防犯性が低い最大の理由は、施錠の仕組みにあります。円筒錠は、ドアノブを固定することで施錠しますが、扉と枠を固定しているのは、普段ドアを開閉する時に出入りしている三角形の「ラッチボルト」だけです。このラッチボルトは、ドアを閉めた状態に保つための部品であり、強い力に対する抵抗力はほとんどありません。つまり、バールのような工具を使ってドアと枠の隙間をこじ開けようとすれば、ラッチボルトは比較的簡単に破壊されたり、引っ込んでしまったりするのです。玄関の鍵のように、太くて頑丈な角柱状の「デッドボルト(かんぬき)」を持たないことが、円筒錠の致命的な弱点と言えます。また、錠前本体の構造も、防犯を主眼に置いて設計されていません。円筒錠は、ドアに開けた円筒状の穴に錠ケースをはめ込むだけのシンプルな構造です。そのため、ドアノブ自体をハンマーなどで強く叩きつけたり、もぎ取ったりするような破壊行為に対しても非常に脆弱です。錠前全体が破壊され、ロック機構が機能しなくなるまでに、さほど時間はかからないでしょう。ピッキングに対する耐性も、防犯用に設計されたディンプルキーなどと比べると、著しく劣ります。これらの理由から、円筒錠を玄関や勝手口、ガレージの出入り口といった、外部からの侵入を防がなければならない場所に設置するのは、泥棒に「どうぞ入ってください」と言っているようなもので、絶対にあってはならないことです。円筒錠の役割は、あくまで室内におけるプライバシーの確保です。寝室や書斎、トイレといった空間を、家族間で仕切るための簡易的な錠前なのです。全ての物には、その機能に応じた正しい使い方があります。円筒錠の限界を正しく認識し、適材適所で活用することが、安全な住環境を維持するための第一歩となります。
円筒錠の防犯性はなぜ低いのかを解説