車に乗り込み、いつものように鍵を差し込んで回そうとした瞬間、びくともしない。あるいは、目的地に着いてエンジンを切り、鍵を抜こうとしても全く抜けない。このような鍵のトラブルは、誰にでも起こりうるパニック案件です。しかし、力ずくでガチャガチャやる前に、まずは落ち着いて原因を探ってみましょう。意外と簡単なことで解決するケースがほとんどです。まず、鍵が「回らない」場合、最も多い原因は「ハンドルロック」です。これは、エンジンを切った後にハンドルを動かすと作動する盗難防止機能で、ハンドルと鍵の両方がロックされます。故障ではありません。この場合の対処法は、ハンドルを左右どちらかに少し力を込めて動かしながら、同時に鍵を回すことです。グッと力を加えるポイントが見つかると、カチッという音と共にロックが解除され、鍵が回るようになります。次に考えられる原因は、シフトレバーの位置です。オートマ車の場合、シフトレバーが「P(パーキング)」の位置に完全に入っていないと、安全装置が働き、鍵が回らなかったり、抜けなかったりします。一度、しっかりとPの位置に入っているかを確認し、少し車体を揺すってみるのも有効です。鍵や鍵穴の摩耗や汚れも原因となります。長年使っていると、鍵山がすり減ったり、鍵穴にほこりが溜まったりして、噛み合わせが悪くなることがあります。この場合、鍵を一度抜いて、柔らかい布で綺麗に拭いてから差し直してみてください。鍵穴の掃除には、エアダスターでほこりを吹き飛ばすのが効果的です。ここで絶対にやってはいけないのが、潤滑油スプレー(CRC-556など)を鍵穴に吹き込むことです。油が内部のほこりを固めてしまい、状況をさらに悪化させる原因になります。もし潤滑剤を使うなら、必ず鍵穴専用のパウダータイプの製品を使用してください。これらの対処法を試しても解決しない場合や、鍵が鍵穴の中で折れてしまった場合は、無理をせず専門の鍵業者を呼びましょう。無理にこじらせると、シリンダー全体を交換しなければならなくなり、修理費用が高額になってしまいます。