合鍵を作ろうと、意気揚々と鍵屋さんやホームセンターに元の鍵を持って行ったものの、「この鍵は作れません」と断られてしまった経験はありませんか。実は、世の中には街の店舗では簡単に複製できない、特殊な登録制度を持つ鍵が存在します。これらの鍵は、第三者による安易な複製を防ぎ、極めて高いセキュリティを維持するために、厳格な管理体制が敷かれているのです。その代表格が「登録制シリンダー」と呼ばれるものです。これは、鍵の所有者の情報をメーカーがデータとして管理し、メーカー自身、あるいはメーカーから認定された特定のサービス代行店でしか合鍵の作成ができない仕組みになっています。合鍵を注文する際には、鍵の引き渡し時に渡されるセキュリティカードや、鍵に刻印されたID番号、そして身分証明書による本人確認が必須となります。注文してから手元に届くまでには、二週間から四週間程度の時間と、それなりの費用がかかりますが、その分、自分の知らないところで勝手に合鍵が作られる心配がありません。有名なメーカーとしては、スイスのカバ(KABA)社や、イスラエルのマルティロック(MUL-T-LOCK)社などが、この登録制シリンダーで世界的に知られています。また、電子錠やカードキーの一部も、物理的な複製が不可能な鍵と言えます。これらの鍵は、ICチップに記録された電子データを認証して解錠するため、そもそも「形」をコピーするという概念が存在しません。スペアが必要な場合は、メーカーや管理会社に連絡し、新しいカードを追加登録してもらう手続きが必要になります。さらに、車の「イモビライザーキー」も、街の鍵屋さんでは簡単には作れません。鍵の形状を複製するだけではエンジンがかからず、車両本体に新しい鍵のIDを登録するという専門的な作業が不可欠です。もし、自分の家の鍵がこれらの特殊な鍵に該当する場合、紛失した時のリスクは非常に大きくなります。全ての鍵をなくしてしまうと、最悪の場合、シリンダーごと交換しなければならなくなり、高額な費用がかかります。そうなる前に、必ず一本はスペアキーを作成し、安全な場所に保管しておくことを強くお勧めします。